玉川 千歳 院長の独自取材記事

ちとせペットクリニック
(横浜市青葉区/青葉台駅)
最終更新日: 2025/05/27

青葉台駅から続く環状4号線を北方向に徒歩約10分。道路沿いにあるガラス張りの動物病院が、「ちとせペットクリニック」だ。アットホームな雰囲気が印象的な同院の玉川千歳院長は、キャリアが40年以上にもなるベテラン獣医師。その豊富な知識や経験を生かしながら、食欲や元気がない、下痢や嘔吐をするなどの症状に対しすぐに血液などの検査をするのではなく、動物の顔色を見たり、飼い主から詳細に話を聞いたりすることで、できるだけ動物に痛みや危険を与えずに診断や治療をすることに尽力している。「わんちゃんや猫ちゃんが、できるだけ動物病院を嫌いにならないよう心がけています」と優しい口調で話す玉川院長に、同院のことや獣医療にかける思いなどを聞いた。(取材日2023年1月25日)
できるだけ痛みや危険を避けることを大切に
こちらでは、どのような診療に対応していますか?

当院では、犬と猫を中心にうさぎや鳥、ハムスターなどを診療しています。この辺りには動物病院は結構ありますけど、鳥やハムスターを診ているところは少ないようですね。そもそも鳥など生活圏が違うものを一緒に診るのは難しいのですが、私はもともと犬や猫はもちろん、鳥やハムスターも大好きで実際に飼っていたこともあるので診ることができるんです。ですが、本当に必要なときには、鳥は鳥、ハムスターはハムスターを専門にしているところに行ってもらうようにしています。ご利用いただいているのは、地域の飼い主さんがほとんどで、内容としてはワクチン接種や健康診断をはじめとして、下痢や嘔吐、目や歯のこと、爪切りや耳掃除など、本当にさまざまなことに対応しています。また、トリミングやペットホテルも行っています。
どのようなことを心がけて、動物を診ていますか?
侵襲性といいますけど、痛みや危険が伴うことを、どうしても必要なとき以外にはできるだけ避けること。そして飼い主さんから話をよく聞いて、なんとか治る方向に持っていけるよう心がけています。検査を嫌がる子は多いですが、例えば、下痢をしているときも、一般的にはほとんどの場合で血液検査をするんです。私は、緊急性があるような場合にはもちろん検査をしますけど、元気で食欲もあるけど、おなかを壊しているというような場合には、今日は検査をせずに対処して、明日も続いていたら検査をしましょうねと言っています。わんちゃんや猫ちゃんは、痛いことをすると動物病院が嫌いになってしまいますが、そうすれば痛い思いをするのを半分くらいは減らせます。そういう意味では、緊急性があるかの見極めを大切にしています。
実際に検査が必要ないこともあるのですか?

私はもう40年以上もやっていますからわかるようになりましたけれど、若い先生には難しいかもしれません。私は、何でもないときでもいつも来てくれている子だと、顔色でもある程度は判断できますね。それに、飼い主さんからは本当にいろいろなことを聞きます。元気や食欲がないというご相談が多いですが、その場合、それが胃腸の問題なのか、循環器、心臓なのか、神経の問題など、原因はいろいろ考えられます。ですから、消化器が疑わしかったら落ちていたものを食べてしまう癖はないかとか、うんちやおしっこはどんな感じかとか、質問攻めにする感じです。そして、類症鑑別といって考えられる病気が3〜4つ出てきますので、その中で緊急性が最も高いものを考慮して、必要なら検査をします。お話を聞かずにまず検査をするといったことは、しないようにしています。
飼い主とのコミュニケーションを大切に
飼い主とのコミュニケーションが大切なのですね。

そうです。なるべく飼い主さんとお話しする時間を長くとりたいですし、初診だと1時間くらいかかることもあります。動物は、赤ちゃんと同じで言葉が話せないですし、状況は飼い主さんとお話をしないとわからないことが多いですから。飼い主さんと気軽に何でも話せる、そういう動物病院でありたいと思っています。ですから、思い出したことは何でも教えてほしい。その中にヒントがあったりしますし、そういう話の中でわんちゃんや猫ちゃんそれぞれの特徴などもわかります。それに、原因がある程度わかったにしろ、わからないにしろ、飼い主さんによっては徹底的に治療をしてほしい人や、しなくてもいい人、その中間ぐらいの人といろいろな人がいますから、ご希望を伺う必要がありますからね。
トリミングも行っていると伺いました。
当院のトリマーは、もう10年以上も勤務していますので、慣れていると思います。それに、ちょっとおかしいなと気づいたことを、伝えてくれるんです。皮膚のことはもちろん、動物の心臓の調子が悪いと外から触れるのですが、それかもしれないと気づいてくれることがあります。また、シャンプーといってもいろいろな種類がありますが、その中からその子の状態に合ったものを選んで使えるのも動物病院でのトリミングの利点だと思います。ただ、動物病院のトリミングなら、どんな子でも大丈夫とは思わないでほしいんです。心臓が悪い子でも、トリミングは動物病院でやってもらえば大丈夫と思っている人もいるようですが、人間がすることに変わりはありませんし、ストレスがかかることも変わりませんから、絶対に事故が起きないわけではありません。それは、理解してほしいですね。
ペットホテルについても教えてください。

ペットホテルは、お泊まりと一時預かりもしています。当院では、基本的に個室にしていますが、わんちゃんの飼い主さんの中には、広いところでお友達と一緒が良いという人もいます。ですが、犬にも小心者っているんですよ。そういうわんちゃんは、個室でないところに預けられると、ご飯も食べずに震えて過ごして、具合が悪くなってしまうこともあります。また、猫ちゃんはあまり触られたくないとか、1匹ずつ入れてほしいとか、暖かくするのが良いといった特徴もあります。このようにわんちゃんや猫ちゃんの特性をよくわかってお預かりができるのは、当院のメリットだと思います。
散歩の途中にでも気軽に寄ってほしい
ほかに、飼い主に伝えたいことはありますか?

わんちゃんは、散歩の途中にでも本当に気軽に寄ってほしいですね。手が空いていれば遊んであげていて、そうすることでわんちゃんもここに来るのが嫌でなくなりますからね。猫ちゃんの場合はそういうわけにはいきませんが、治療のときは興奮しないように黙々と診て、ちゃちゃっと採血して、そーっと帰すようにしています。私は猫ちゃんの扱いに慣れているので、逃げ回るのを追いかけ回すような状態にはならないですよ。あと、トリミングの時に言ってもらえれば、耳洗浄も対応しています。トイ・プードルなど、外耳炎で耳が真っ赤になってしまうことがありますが、そんな場合は耳の洗浄に1ヵ月に1回くらいは来てほしいなと思います。
ところで、先生はなぜ獣医師を志したのでしょうか?
小さな頃から動物が大好きだったんです。親も動物好きだったので、小さな頃から家には鳥やわんちゃん、猫ちゃんがいました。子どもの頃は性格も活発で、家の中にいるよりも外にいるほうが好きでしたから、よく犬の散歩にも行っていましたし、道ばたに落ちている鳥がいると、放っておけませんでした。獣医師になろうと思ったのは、高校生の頃だったと思います。その頃は動物に限らず、人間を含めて生き物全般の医学的なことに興味があったんです。また、昔から犬と一緒にいることにも幸せを感じていて、それでどちらにも携われる、獣医師になりたいと思うようになりました。家族にも知り合いにも獣医師はいなかったのですが、絶対になるんだと強く思っていました。
最後にメッセージをお願いします。

一つは、気になることがあったら様子を見ないでほしいんです。例えば、急性膵炎は急激に具合が悪くなりますが、様子を見ているとそれだけ治療の開始が遅れてしまいます。緊急性があることも少なくありませんから、何かおかしいときには様子を見ずに、とりあえず診せに来てほしいですね。また、何事も悪くなる前に対処することが大切ですから、血液検査もできる子であれば定期的にするなど、予防や病気の早期発見は、人間と同じようにわんちゃんや猫ちゃんも大事かなと思います。